スターリン -- 赤い皇帝と廷臣たち (サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ著:白水社)

ロシア・東欧の歴史や地理に関しては昔から興味を持って多くの本を読んでおり、その中には、スターリン時代の歴史をあつかっているものもいくつかありました。しかしながら、スターリンそのものが主題となる本は、その内容のあまりの重苦しさを予想して、今まで半ば意図的に避けてきました。図書館の新刊コーナーで見つけて借りてきたこの本を読んで、彼の家族を含む周囲の人間関係の複雑さと、これまでバラバラな知識だった「スターリン時代」に起こったさまざまな出来事が、ようやく自分の頭の中で関連付けられてきたように思います。
 元々粗暴で独裁者気質だったスターリンですが、それでもレーニンの死後に共産党トップになってしばらくの間は、幹部集団の仲間内ではかなり気さくで、オルジョニキゼを始めとして彼と対等に口をきける幹部もいたようです。しかしプロローグで描かれる二番目の妻ナージャの自殺前後から独裁色を強めたスターリンは、元来の猜疑心の強さからライバルとなり得る側近に対する弾圧・粛清を強め、エジョフ・ベリヤという二人の怪物の登場によって、ついには組織が麻痺するほどの大粛清が行われました。その過程では、側近ばかりでなくスターリンの家族でさえも容赦なく粛清の対象とされ、ついには彼に意見をいう事が出来る者は誰もいなくなった中で、ヒトラーによる不意打ちを食って(客観的には予兆が色々とあったのですが、スターリン本人にとってはまさに不意打ちだった)、第二次大戦序盤の大敗北を招いてしまいます。

 大きな歴史的事件に関しては、すでに何かで読んだりして知っている事が多かったので、それ以上に興味深かったのは、共産党幹部の親族たちがお互いに非常に親密で、半ば一つの大家族の様だった点です。スターリンの愛娘スヴェトラーナが、ベリヤの息子セルゴに恋をしていたというのはこの本で初めて知ったのですが、このカップルが実際に結婚していたら、歴史は大きく変わっていたのでしょうか。また、スターリンの(二人の妻たちを通じての)義理の姉妹たちや幹部夫人たちがかなり口さがなく、色々な事に嘴を突っ込んで影響力を行使していたのもちょっと意外でした。このことがスターリンを苛立たせ、最後には命取りとなる訳で、もしかするとこれが教訓となって、後の時代には党幹部の夫人は少なくとも対外的には全く目立たないようにしていたのかもしれません。

 スターリン時代に起こったソビエト国内での「大量虐殺」のうち、ウクライナでの大量餓死を含む革命初期のものは、スターリン個人ではなくイデオロギー至上主義という共産党の体質そのものに責任があると考えられます。一方で大粛清の方は、正にスターリンの個性によるものだと言えそうです。
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