ギリシャ劇大全 (山形 治江 著:誠創社)

 もう20年以上前の話ですが、NHKラジオでギリシャ悲劇に関する講座が放送されていたのを聴いていた事があります。講師の巧みな話術に引きこまれ、ギリシャ悲劇と古代ギリシャの歴史との関係に興味をそそられたのを記憶していたのですが、今回この本を新刊コーナーで見つけた瞬間に、この著者こそ正にあのときの講師だったと確信しました。
 アイスキュロス、ソフォクレス、エピリピデスの三大悲劇詩人の完全な形で現存する作品全てと、アリストファネスの喜劇作品全てについての粗筋と解説、さらにギリシャ劇に関するさまざまな話題をコラムの形で取り上げたこの本は、まえがきで著者が述べている実用書としてだけではなく、題名に現れているようにギリシャ劇全てについて理解を深めるための専門書としての価値も高いように思います。特に、劇の書かれた時代背景の説明によって、古代アテネがその全盛期から段々と衰退していく中での劇作とその時代との関係を知ることができ、とても興味深く読みました。

 オイディプス王やメディアといった有名作品については、その粗筋を私も知っていたのですが、名前しか聞いた事がなかった作品や、さらには全く初めて知った作品も多く、普通の小説を読むのと同様に気軽に楽しめました。特に最後の章にまとめられたアリストファネスの喜劇作品は、一部には確かに時代や文化の違いで面白みが分からない部分もあるものの、政治家のやる事は昔も今もあまり変わらないようで、その政治風刺は現在にも十分通用しますし、お笑い番組でよくあるくだらない下ネタオンパレードがすでにこの時代にも全盛だったと分かり、苦笑してしまいます。
 登場人物によって語られる、トロイア戦争に対する評価もなかなか興味深いものでした。「一人の女のために戦争なんてくだらないしみっともない」というキュクロプスの台詞を始めとして、英雄ではない冷静な部外者のこの戦争に対する評価は厳しいものですが、これはこの時代の観客にもある程度共有された見方だったのでしょうか。
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