映画 「スター・トレック」

 今頃になってこの映画を初めて視た事自体、ファン失格というか自分の中でSTへの関心が冷めている事を示しているのですが、やはり色々と気になる点が目につきました。
 まず、「歴史を変える」という手法で、過去のシリーズからのしがらみを断ち、まっさらの状態で新たなシリーズをスタートさせようという意図自体は、積極的に評価したいと思います。実際、TOS以降VOYまでのTV4シリーズ(もしTASを正史とみなすなら5シリーズ)によるST世界の設定には色々と矛盾も出ている上に、それらの設定に縛られて新たなシリーズが展開しにくい状況になっていました。そのため前シリーズのENTにおいても、あえて時代をそれまでより過去に設定すると共に「時間冷戦」を導入し、それまでの「歴史」の書き換えを目指したと思われますが、時代設定の制限による縛りの厳しさと展開の遅さにファンの支持が得られずに、第三シーズン以降の路線転換が行われ、歴史の書き換えという目標は頓挫した形になりました。
 今回の映画では、歴史の書き換えによる設定の白紙化という狙いはより明確で、恐らくネロが過去に現れてUSSケルヴィンと接触した時点で過去が変わり、それ以降はこれまでのシリーズの設計は無効化されたと思われます。次々と登場したTOSの主役たちの設定が元々のものと矛盾しているのも、そう考えれば特に問題はありません。このあと新たなシリーズが作られるなら、バルカン人はエル・オーリア人あるいはENTの一話で描かれたXindiに滅ぼされた地球人たちのように流浪の民となり、ロミュランへの復讐を考える者たちすら出てくるのかもしれません。

 しかし主役、特にカークの性格付けには疑問あるいはかなりの違和感を覚えました。この映画でのカークの一連の言動と振舞いは、何の根拠もない傲慢さとでもいうべきもので、特にブリッジでのスポックとの対立の場面では拘束されて当然と感じてしまいます。(さすがに船外投棄はマッコイの言うようにやりすぎの気がしますが。)もちろん彼の主張は「結果的に正しかった」のでしょうが、それはドラマを成立させるためのご都合主義であり、一方的にまくしたてるばかりの彼の主張には全く説得力がありません。尤もこの辺は、映画特有の説明不足によるもので、画面に描かれなかった部分を加えると、劇中で見ている者にとってはもう少し説得力があったのかもしれませんが。この辺のカークへの違和感というか反感は、もしかすると私が年をとって訳の分からない言動を繰り返す若者に生理的な反感を覚えるようになったためかもしれません。作中でのパイク艦長の言葉は、現在の閉塞状況必要なのは、カークのような無鉄砲な自信過剰が必要だというメッセージなのでしょうが、この作品での彼とその仲間の言動は、それに説得力を感じさせるものではありませんでした。

 その他に、なんだか変だなと思った点を幾つか列挙してみます。
1. ネロとその部下が、まったくロミュランに見えない。連邦の面々が彼らをロミュランと認識している点からすると、ネロたちだけではなく、この世界のロミュランそのものがあの姿をしているようです。もしかしてクリンゴン同様に所謂「大人の事情」でロミュランのメークが変わったのでしょうか。あるいはそれにこじつけると、「ネメシス」以降のいずれかの時点でロミュランにクリンゴン同様のウイルスによる容貌の変異があり、そのウイルスを感染したネロが過去に持ち込んだために、現在のロミュランも同じ容貌に変わったとか。
2. エンタープライズがなぜか地上で組み立てられている。ENT時代にはNX-01が宇宙で組み立てられていますから、それより後のこの時代に、それができないはずはない。地上で組み立てるメリットがあるとはちょっと思えないし、何とも不思議です。
3. 老スポックとカークが追放された惑星は、バルカン星とは異なる太陽系にあるようだが、それならバルカン星の崩壊が見えるはずはない。もっとも老スポックが見ていたあのシーンは、彼の心内イメージだったのかもしれませんが、それにしてもどうやってバルカン星が滅びた事をあの時点で知っていたのでしょう。
4. エンタープライズがタイタンに到着する前に、ネロの船は地球近くに達していたようで、そうするとネロの船に転送するチャンスはなかったのでは。なお、タイタンの軌道は輪と同じく土星の赤道面に極めて近いので、タイタン近傍から輪が見える事はないのですが、それを突っ込むのは野暮かもしれません。
5. いくらカークが救星の英雄だからと言って、士官候補生(それも謹慎中)から大佐への昇格は、組織としてあり得ない。というか、宇宙艦隊の階級システムがどうなっているのか理解できない。最上級の勲章くらいなら当然でしょうが。

追記:この記事を書いた後でWikipediaのロミュラン人の項目に、上の疑問点に関する記載を見つけました。ネット上の"Star Trek Online"という文献によるものらしいのですが、この「未来」は今回の映画の展開、特にヴァルカン星が崩壊した事で連邦の歴史が大幅に変わり、もはや現実のものにはならないのでは。ロミュラン星系近くでの超新星爆発そのものすら、それがより早く予見されれば阻止できるのではと思います。

追記2:Star Trek Onlineのリンク先を見たら、実はオンラインゲームでした。そうなるとこの設定が正式なものになる可能性は低そうです。というより、上に書いたように今後のシリーズには関係ない別世界の話となるので、ある意味何でもありなのかも。
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お久しぶりです。

いよいよX^2さんもST復帰ですか(^^)

記事中のことですが、

> 1. ネロとその部下が、まったくロミュランに見えない。

これは、前にワタシのサイトで紹介した"StarTrek: Count Down"(映画前日談のコミック)に
少し説明がありました。
ロミュラン星崩壊で故郷と家族を失い怒り狂ったネロは、その責任はスポックにあると復讐を誓います。
復讐の儀式のようなものが行われ、その際に髪を落とし、顔に刺青を施したのです。
そのため外見は我々の知るロミュラン人とは異なっているというわけです。

> 2. エンタープライズがなぜか地上で組み立てられている。

さてこれは。単に絵的なものを狙っただけで意味はなさそうですね(^^;

> 3. 老スポックとカークが追放された惑星

これは気づいてませんでした。でもバルカン星系内の惑星と考えるのが妥当では?
ローレンシア系に向けて出発する前にカークを追放したみたいでしたし、
ネロはスポックにバルカン星崩壊を見せたかったわけですから、見えるところにいたのでは。

> 4. エンタープライズがタイタンに到着する前に、ネロの船は地球近くに達していた

これも気づいてませんでした。ネロ、もうドリルを下ろしてましたもんね。
転送って、土星から地球までカバーしてるんですかね(^^;)。

> 5. 士官候補生から大佐への昇格

ワタシも完全にはわかりませんが、候補生は、既に階級を持つ者がいるようなのです。
「ウラ大尉」なんて呼ばれてましたよね?なので、実戦経験もないただの候補生がいきなり...
というのとはちょっと事情が違うようです。映画"TOP GUN"のような、士官の再訓練施設(も兼ねる)なのかも(苦しい^^;)

まぁ、カークがいきなり艦長になる理由にはなりませんが。

yonetchさん、こちらこそ久しぶりのST関係記事となりました。
1のうち刺青と髪型については一応説明がつくんですが、TNG時代のロミュランに特徴的な額の隆起もないですよね。そういう事もあって、半ば冗談でクリンゴンと同じ原因ではと書いたのです。
3ですが、字幕ではベガ星系の惑星とあった気がします。とするとヴァルカンとは違う星系ですよね。まあこれはいちゃもんに近いかもしれませんし、翻訳ミスの可能性もあります。
5も「ST世界の宇宙艦隊ではそうなんだ」と言われればそれまでなんですが、士官候補生がいきなり大尉になれるシステムでは、軍隊秩序が保てない気がします。卒業後最初に任官した際には少尉で、恐らく一定期間後に自動的に中尉までは昇格するが、それ以降の昇進は功績が必要というのが普通なのでは。TNGのQがらみの一話で、決断をしなかったピカードがうだつの上がらない「万年中尉」になっているという話がありましたよね。また、ウラ「大尉」はTOSに引きずられた「中尉」の翻訳ミスのような気がします。

そもそも連邦でいう「CAPTAIN」を「大佐」と訳していいのでしょうか?現在の軍の階級で考える事自体間違っているのかも?
「宇宙大作戦」ではエンタープラズは軍艦ではないという解釈だったので「CAPTAIN」を「船長」と訳していましたしね。TNGで軍艦ぽく訳してしまったので、整合が取れなくなっちゃいましたね。

ま、どっちにしてもSF映画なんて突っ込むところ多くて当然です。いやそれこそがSF映画の楽しみの大きな一つといえるかもしれませんね。

piaaさん、、こちらへの訪問&コメントありがとうございます。
Captainが大佐なのか、という疑問にはやや意表を突かれましたが、確かにその点から考察が必要な問題かもしれません。シリーズ原点であるロッテンベリーの理想からいうと、艦隊は軍隊ではないのですが、実際やっている事は軍事行動に他ならず、その後の吹き替え等では現実に押されて軍隊の階級制度そのままになってしまいました。この艦隊の階級制度に関しては謎の部分が多く、きちんと考証をしないままにシリーズが作られている感はいなめません。
今回の映画では、一話の中で早くもTOSのレギュラーメンバーが全員集結してしまい、しかもその階級というか担当職に全員を到達させたために、相当に無理な展開になっているように思います。本来なら、数年かけて初めてTOS開始の時点に到達させるのが自然だったのでしょうが・・・。
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